負担限度額認定制度とは?介護保険施設の負担を軽減する方法

介護施設に入りたいけど、利用料が高い・・・

そんななか、介護保険を利用できる「介護保険施設」が相変わらず人気です。

公的介護施設というのは、自治体や社会福祉法人など公的機関が運営する「特養」や「老健」などの施設のこと。

特養について詳しい解説は、「特別養護老人ホームとは?入居するために必要な要件や費用などを全解説」をお読みください。

しかし介護保険サービスを利用するからといって、施設の利用料金がただになるわけではありません。

収入が限られる国民年金のみを受給する方などは、介護保険施設の自己負担分でも支払うのが困難という場合もあります。

そこでこの記事では、介護保険サービスを利用する際に、少しでも費用負担を軽くできる介護保険の負担限度額認定制度の概要や、対象者、申請の方法などをわかりやすく解説します。

介護保険の負担限度額認定制度とは?

介護保険サービスを利用するときの自己負担額は、「介護保険負担割合証※」に記載されている利用者負担割合に応じて、算出されます。

介護保険負担割合証とは

要介護認定を受けた人に配布される証書で、介護保険サービスの利用者負担割合が明記されています。

しかし国民年金のみで生活されているお年寄りの方や、身よりがなかったり経済的に苦しい状況にある方などは、自己負担額がたとえ1割であったとしても、利用料が支払えないという方もいますね。

そこで介護保険施設※に入所する場合やショートステイを利用するとき、所得の少ない方でも入所しやすいよう、施設居住費や食費の自己負担額を軽減できる制度があります。

介護保険施設とは

介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護療養型医療施設の3施設

それが介護保険の負担限度額認定制度。

この制度を利用して自己負担額を減らすためには、たとえ収入が少なく、介護保険施設の利用料の支払いが困難だと感じている方でも、役所に申請を出さなければなければなりません。

特別養護老人ホームの自己負担額を減らしたい!

そういった方は、市区町村役場の担当部署に申請してください。申請の仕方はこちらで説明しています。

負担限度額認定制度の対象者

負担限度額認定制度は、申請すれば誰でも対象になれるわけではありません。厚生労働省によって、収入に応じて対象者の負担限度額が定められています。

また平成27年に介護保険制度の改正され、対象者の要件が厳しくなりました。

負担限度額認定制度の対象者の要件は、次の要件をすべて満たす必要があります。

 

負担限度額認定制度を受けるための要件

  • 世帯全員の住民税が非課税
  • 配偶者の住民税が非課税(世帯分離を含む)
  • 夫婦の預貯金等の金額の合計が2,000万円以下(配偶者がいない方は1,000万円以下)

 

介護保険施設に入所する本人だけでなく、世帯全員の住民税(市町村民税)が非課税であることが要件です。

以前は、たとえば夫が社長でベンツを乗り回していたとしても、夫婦が生計を分離している場合は、妻は負担限度額認定制度は申請することができました。

しかし改正後は、夫婦が世帯分離していたとしても、片方が住民税の納税者だと対象害になってしまいます。

夫婦のどちらか、家族のだれかが住民税を納税できるほど所得がある場合、その人に経済的支援をお願いするように、ということなんです。

さらに、夫婦の預貯金の合計が2,000万円以上ある場合もNG。

貯金から支払ってください、ということですね。

高齢者が激増して社会福祉予算が国庫を圧迫しているとはいえ、子や孫に財産を遺してやることもできず、老いれば子供の経済的支援に頼らざるをえないとは、暮らしにくい世の中になりました。

負担限度額認定制度の負担段階区分とは!一日の利用料はいくら?

負担限度額認定証があると、特別養護老人ホームなどの介護保険施設に入所したとき、居住費や食費の自己負担額が安くなります。

しかし対象者は負担限度額が一律ではありません。

所得が少ない人ほど負担する金額が少なく済むように段階別に分かれています。その負担段階区分は、次のとおりです。

 

負担限度額認定制度の負担段階区分

設定区分 対象者
第1段階
  • 生活保護等を受給している人
  • 世帯全員※1が市町村民税を課税されていない方で、老齢福祉年金の受給者
第2段階
  • 世帯全員※1が市町村民税民税を課税されていない方で、本人の合計所得金額と課税年金収入額※2と非課税年金収入額※3の合計が80万円以下の人
第3段階
  • 世帯全員※1が市町村民税民税を課税されていない方で、第2段階以外の方
第4段階
  • 市町村民税課税世帯(一般世帯)

※1 世帯を分離している配偶者を含みます

※2 国民年金や厚生年金などの老齢年金

※3 遺族年金や障害年金など

 

では認定を受けることができた場合、介護保険施設の自己負担はいくらになるでしょうか。

この負担段階区分ごとの、食費と居住費の日割り料金は、次のとおりです。

 

利用者負担段階別の食費と居住費(日額)

  第1段階 第2段階 第3段階 基準費用額
食費 300円 390円 650円 1,380円

従来型個室

(特養/老健等)

320円/490円 420円/490円 820円/1,310円 1,150円/1,640円
多床室 0円 370円 370円 840円(特養)/370円(老健等)
ユニット型個室 820円 820円 1,310円 1,970円
ユニット型個室的多床室 490円 490円 1,310円 1,640円

 

このように第1段階~第3段階に認定されると、介護保険施設の居住費や食費が割安に利用できる、というわけですね。

第4段階の人には、残念ながら負担限度額はなく、施設が提示する費用を額面通り支払うことになります。

負担限度額認定を受けるために必要な手続きと申請書類

さきほども書いたとおり、負担限度額認定制度は市町村役場に申請書を提出しなければ、受けられる負担軽減措置も受けられません。

そこでどのような書類を提出しなければならないのでしょうか。申請に必要な提出書類は、次のとおりです。

 

申請に必要な提出書類一覧

介護保険負担限度額認定申請書 市区町村の担当窓口で受け取ります。市のホームページからダウンロードすることもできます。
同意書 課税や資産(預貯金の残高、有価証券の有無など)の現況が申請通りかどうか、調査することに同意する書類です。
本人及び配偶者の預貯金等の通帳の写し 預貯金の通帳だけでなく、株や投資信託、タンス預金、金などの貴金属なども財産として報告する必要があります。残高を証明できる写しなどを持参します。

マイナンバー確認書類

身元確認書類

個人番号カード、通知カード、マイナンバーが記載された住民票の写し等
身元確認書類 個人番号カード、運転免許証、パスポートなど

 

介護保険施設の居住費や食費の自己負担を軽減するには、市町村役場に上記書類を持参し、介護保険負担限度額認定の申請をしてください。

認定がおりれば「介護保険限度額認定証」が交付されますので、それを入所する施設に提出するという流れになります。

虚偽報告に注意!

財産が少ないフリをして認定を受けよう。黙っていたらわからないだろう。

収入や預貯金をごまかし、虚偽の報告をして、介護保険負担限度額認定を受けようとする方もいるかもしれません。

しかしマイナンバー制度が導入され、個人の財産は確実に紐づけられています。黙っていればバレない、などという時代ではありません。

万が一、申告内容に虚偽や不正が見つかった場合、正しい負担限度額の最大2倍の加算金を支払わなければならなくなります。本来、支払うべき負担限度額と合算すると3倍の費用を支払うことに。

どこをどう調査されても心配しなくていいように、公明正大な申告をしましょう。

負担限度額認定制度のまとめ!老人ホームの費用負担を減らす方法

この記事では、特別養護老人ホームや介護老人保健施設、介護療養型医療施設、ショートステイを利用する方の、居住費や食費の自己負担分を軽減する制度「負担限度額認定制度」について解説してきました。

平成28年の制度改正により、この制度の認定を受けられる範囲が狭くなりました。

配偶者(生計を分けているかどうかにかかわらず)の収入が多い場合や、預貯金が1,000万円以上(夫婦だと合計2,000万円以上)ある場合、世帯のうちどなたかが住民税の納税者であるなどの場合、居住費と食費の負担額を減免することはできません。

「介護施設の費用は、夫婦・家族間で負担しあいましょう」という政府の方針なんですね。

とはいえ、「支払うお金があるならとっくに支払っている!」とおっしゃる方、ごもっともです。

ない袖は振れぬ、とはこのこと。

申請の対象者に当たるかたは、市町村役場の担当窓口で負担限度額認定の申請を行ってください。