特定入所者介護サービス費(補足給付)とは?介護保険施設の自己負担を軽く

特定入所者介護サービス費(補足給付)居住費と食費が減額できる制度

支払う費用が比較的安い、特養(とくよう)や老健(ろうけん)などの介護保険施設に入所できたとしても、その自己負担分さえ家計を圧迫してしまう

所得が少なかったり、公的年金のみで暮らしている方の中には、このような方も多くいらっしゃるでしょう。

そういう方々にとって生活の助けとなるのが「特定入所者介護サービス費」。

この記事では、介護保険施設やショートステイ、デイサービスなどの居住費や食費の自己負担分を軽減することができる「特定入所者介護サービス費」について解説します。

特定入所者介護サービス費(補足給付)の概要

介護保険サービスの適用を受けることができる介護保険施設※は、比較的割安な費用で入所することができます。

介護保険施設とは

介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)、介護老人保健施設、介護療養型医療施設の3施設のことです。

しかしこれらの施設においても「居住費」や「食費」保険給付の対象外。利用者自身が負担しなければなりません。

ただ所得の低い方ですと、これらの費用を支払うのも困難な方もいらっしゃいます。

そこで、所得の低い方は「居住費」や「食費」の負担額を所得に応じて減額し、減額した不足分を「特定入所者介護サービス費(補足給付)」として施設側に支給されることになりました。

つまり「基準費用額※」から「負担限度額」を引いた差額を「特定入所者介護サービス費」といい、保険給付で補うということです。

基準費用額とは

国が定める平均的な「居住費」や「食費」の金額で、施設と利用者が相談して決定する「居住費」や「食費」の目安となります。

特定入所者介護サービス費・利用者負担・基準費用額の概要

POINT

基準費用額:国が定める居住費と食費の平均定な金額

利用者負担:入所者側が負担する実質的な金額

補足給付:特定入所者介護サービス費。居住費や食費の負担額を減額した不足分を施設側に支払う

このように特定入所者介護サービス費を支出することで、利用者が負担する金額を減らすことができるというわけです。

特定入所者介護サービス費の対象サービス施設

特定入所者介護サービス費の適用を受ける対象は、次の施設です。

  • 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
  • 介護老人保健施設
  • 介護療養型医療施設
  • 介護医療院
  • 短期入所生活介護(ショートステイ)
  • 短期入所療養介護(ショートステイ)
  • 地域密着型介護老人福祉施設

このような施設に入所している(もしくはこれから入所する)という方は、要件に該当すれば、特定入所者介護サービス費の支給を受けることができます。

特定入所者介護サービス費の対象施設は、いずれも介護保険サービスを提供する公的施設なので、有料老人ホームやグループホームなどの民間施設に入所している方は、残念ながら対象外です。

特定入所者介護サービス費を受けるための要件

特定入所者介護サービス費の適用を受けるには、まず市町村窓口で介護保険負担限度額認定の申請をし、「介護保険負担限度額認定証」の交付を受けましょう。

負担限度額の認定を受けるための要件は、次のとおりです。

 

負担限度額認定制度を受けるための要件

  • 世帯全員の住民税が非課税
  • 配偶者の住民税が非課税(世帯分離を含む)
  • 夫婦の預貯金等の金額の合計が2,000万円以下(単身者は1,000万円以下)

このような方が対象者であり、さらに段階別に負担限度額が定められています。負担限度額の段階区分は次のとおりです。

 

負担限度額認定制度の段階区分

設定区分 対象者
第1段階
  • 生活保護等を受給している人
  • 世帯全員※1が市町村民税を課税されていない方で、老齢福祉年金の受給者
第2段階
  • 世帯全員※1が市町村民税民税を課税されていない方で、本人の合計所得金額と課税年金収入額※2と非課税年金収入額※3の合計が80万円以下の人
第3段階
  • 世帯全員※1が市町村民税民税を課税されていない方で、第2段階以外の方
第4段階
  • 市町村民税課税世帯(一般世帯)

※1 世帯を分離している配偶者を含む

※2 国民年金や厚生年金などの老齢年金

※3 遺族年金や障害年金など

先年、負担限度額認定制度が一部改正され、第2段階の要件に「非課税年金収入額」が付け加えられたり、対象者要件に預貯金の合計金額が加わったりしたため、範囲が厳しくなり、これまでの対象者から外れる人も。

そのため現在利用されている方の中にも、収入額に見合った利用状況に見直しが必要になる可能性もあります。

介護保険負担限度額の具体的な金額については「負担限度額認定制度とは?介護保険施設の負担を軽減する方法」をお読みください。

特定入所者介護サービス費の申請

特定入所者介護サービス費の適用を受けるには、お住まいの自治体で手続きをする必要があります。

手続きに必要な書類は、次のとおりです。

提出書類

介護保険負担限度額認定申請書 申請書の必要事項を記入し、提出します。用紙は市区町村の担当窓口、または市のホームページからダウンロードすることもできます。
同意書 課税や資産(預貯金の残高、有価証券の有無など)の現況が申請通りかどうか、調査することに同意する書類です。
本人及び配偶者の預貯金等の通帳の写し 預貯金の通帳だけでなく、株や投資信託、タンス預金、金などの貴金属なども財産として報告する必要があります。残高を証明できる写しなどを持参します。

マイナンバー確認書類

身元確認書類

個人番号カード、通知カード、マイナンバーが記載された住民票の写し等
身元確認書類 個人番号カード、運転免許証、パスポートなど

 

以上の書類を提出し「介護保険限度額認定証」の交付を受けることができると、認定区分に従って、介護施設の居住費や食費の自己負担を減らすことができます。

特定入所者介護サービス費が適用されると生活保護が廃止される

生活保護を受給されている方は第1段階に区分され、特定入所者介護サービス費の支給を受けることができます。

しかし生活保護を受けている方のうち、特定入所者介護サービス費を支給された場合、生活保護を必要としない状態となる方(境界層該当者といいます)は、生活保護が廃止されることになります。

たとえば「居住費」や「食費」の負担段階を第2段階から第1段階に変更され、生活保護が廃止となります。このことを介護保険制度における「境界層措置」といいます。

境界層措置については、お住まいの市区町村の生活保護担当にお問い合わせください。

特定入所者介護サービス費まとめ

この記事では、特定入所者介護サービス費について解説してきました。

特定入所者介護サービス費の適用を受けると、特養や老健などの介護保険施設に入所している方は「居住費」や「食費」の負担が軽くなります。

適用を受けるには、まず市町村役場に介護保険限度額認定申請をし、介護保険限度額認定証の交付を受ける必要があります。

しかし所得が低い方、資産が少ない方など、対象者には一定の基準があります。「ご自分が該当しているかどうかよくわからない」という方は、市町村役場の担当課にお問い合わせくださいね。