介護の仕事は大変?老健に勤めている介護士が実体験に基づいて解説
当サイトの管理人は、老健(介護老人保健施設)に勤めている介護士です。
介護の仕事といえば、3K(きつい、汚い、危険)といわれる大変な仕事として敬遠されがちですね。
私もはじめ「自分のような人間が本当にちゃんとやっていけるか不安」だったのですが、
入職してみて「意外とイイかも」と、楽しく仕事をさせてもらっています。
そんな私が、介護の仕事の良い面、悪い面などを、実体験に基づいて語ってみようと思います。これから介護の仕事につくことを悩んでいる人は、ぜひ参考にしてください。
介護の大変さはどんなところ?介護職の良い面・悪い面
これから介護職につこうか悩んでいる人は、まず介護の仕事の良いところや悪いところが知りたいですよね。
介護職は慢性的な人手不足のため、未経験・無資格でも採用される可能性が高く、年令や性別、経歴にかかわらず就職へのハードルが低いところも魅力です。
しかしせっかく就職できたからといって、適正のない仕事をやり続けるのは辛いもの。
介護職のいい面と大変な面をあらかじめ把握しておくのが、失敗を避ける一つの方法です。
介護の仕事の良いところ
私が介護の仕事に実際についてみてよかったと思うことは、次の5つです。
- 性別を問わず活躍できる
- キャリアアップできる
- 社会貢献しているという前向きな気持ちになれる
- 人と人とのコミュニケーションが楽しい
- 手当が付く
まず1、介護職は男女問わず、平等に評価される職場です。
これまでいくつかの一般企業を渡り歩いてきた私ですが、どこの企業も女性が出世できる環境とはなかなかいえませんでした。
女性が役職に就くことができても、最終的な決定権はやはり男性にあります。一般企業における女性の立場は、どちらかというと男性のサポート的な存在なんですね。
しかし介護職は女性でも上を目指し、バリバリ仕事ができます。女性の頑張りが正当に評価されるという環境だといえるのです。
2、仕事をしながら資格を取り、経験を積めば、キャリアアップすることができます。
介護職は看護職のような専門職。
介護の経験と資格はあなたの財産です。出産や育児、親の介護などでしばらく離職することがあっても、「介護経験あり、資格あり」だと再就職が決まりやすく、基本給も高いです。
夫の転勤などでどこかへ引っ越さなければならなくても、またキャリアゼロから再出発というような憂き目にはあいません。
3、高齢化社会になり、介護職は世のため人のためになっている仕事だと、胸を張れる仕事です。
介護職は、とくにボランティア精神が旺盛な人には向いている仕事。
実際のボランティアはお金を稼ぐことが目的ではありませんが、逆に「お金がもらえるボランティア」だと考えると「いいじゃん」と思えませんか?
私は、自分の終活のために介護職を始めました。
「死ぬまでになにか善行を積みたい」そんな気持ちで始めたんです。他人のためというより「自分のため」。
4、入所しているお爺さんお婆さんとの会話や、ふれあいを楽しく感じています。
私が担当しているのは、老健の中でも認知症介護の部署です。
始めはビビっていましたが、いやー面白い!! 認知症のご老人の話すことはいきなり突拍子もないことをしゃべり出したりして、非常に面白いです。
また認知症の本人は、言ったことも言われたことも大抵忘れてしまうので、「あんなこと言われたけど、何だったの?」とか、「あんなこと言っちゃったけど、傷つけたかな?」とか、たいがいの失言は気にする必要がないところが気が楽です。
ただ介護士の暴力や暴言はダメです。受けた暴力や暴言は、認知症といえどイメージとして記憶できるようです。気を付けてくださいね。
5、手当がつく
無資格、未経験の見習い状態だと、給料はそれほど高くありません。
しかしキャリアアップすれば給料が高くなっていきます。手当がつくためです。夜勤には夜勤手当が付くので、一般職よりは、よほど手取りは良いのではないでしょうか。
「頑張れば、よい生活が待っている」という未来への希望が持てますね。
介護の仕事の大変さ
いい面とは裏腹に、気になるのはやはり「介護職の大変さ」。ここでは実際に入職している私が日々感じている大変さについて解説します。
- 入所者の名前や特徴を覚えること
- 「決められたことをキチンと」を求められる
- スタッフの人間関係
- 腰を痛める可能性がある
- 汚物や汚染物の処理
1、入職者の名前や顔、特徴をインプットする
まず介護職に就いて、最も大変なことはこれなんです。私が担当している入所者は50名。50名分の名前や顔、特徴を覚えることに、最大の努力をしました。
実は私、人の名前を覚えるのがめちゃくちゃ苦手なんです。お爺さんやお婆さんの顔とか、みんな一緒に見えるし(苦笑)。
でもね、仕事だと思えばなんとかなります。
ちょっぴり自慢なんですが、2週間で50人分の名前と顔を覚えました。必死でした(笑)
2、決められたことをキチンとすることが大事。
その施設ごとにそれぞれ決められたルールがあると思うので、スケジュールに従ってキチンと作業ができることを求められます。
逆に言うと、それ以外のことは求められないかも?
たとえば営業職だと契約を取ってくるノルマがあります。製造業だと生産性が求められます。一般企業は、必ず前年より今年、今年より来年、というように年々成長していかなければなりません。利益追求のために売上アップの工夫を講じていかなければならないんです(永遠に!)。
企画会議では、常に斬新なアイデアが求められます。アイデアが出てこない社員はダメなんです。
私にはそういう世界が重荷でした。
その点、介護職は売上アップも成績アップも必要ありません。私にとっては気持ちが楽なんですね。
ただ、決められたことを決められたルールと手順に従って、時間通りに行うことは必須。
おむつ交換やトイレ介助の時間もだいたい決まっていますので、時間通りに全員分行います。その人その人で硬直があったり、褥瘡(じょくそう=とこずれ)があったりするので、個々の対応も気を付けなければなりません。
この点、繊細な心使いが求められる職場だといえるでしょう。
3、介護士同士、介護士VS看護師の人間関係がヤバい可能性
介護士や看護師のなかにもいろんな人がいて、優しい人もいれば人間的にヤバい人もいます。残念ですが、これが現実。これさえなければ本当にいい仕事なんですが。
介護士は看護師の指示で動くことがルールなので、看護師の人の性格がアウトだと職場全体がピリピリするそうです。
ウチの職場の看護師はフレンドリーで、何かと助けてくれる頼もしい仲間なのですが、以前別の施設に勤めていた人の話によると看護師の態度がかなり酷かったとか。
こればっかりはその施設によりけりなので、入職してみないことにはわかりませんけどね。
4、腰や体を傷めないよう、用心する必要がある
車いすからベッド、ベッドから車いす、など介助が必要な人に欠かせないのが「移乗(いじょう)」。男性で全介助の方だと介助も大変です(重い!)。
そのためボディメカニクスを駆使した介助の方法をマスターしないと、介護士の腰がヤラレます。ベッド上の入所者さんのおむつ交換なども、中腰でやらなければならないのでしんどいです。
私もしばらく腰が痛かったのですが、筋肉がついてきたのか、仕事に慣れたのか次第に痛みがなくなりました。しかし油断しないで、注意しながら介護しなければならないと思います。
5、汚物、汚染物が汚い、臭い
介護は食事介助だけではありません。やはり何といっても排泄介助が大変さのネックです。ただ、素手ではなく医療用手袋をつけてやります。
これまで他人のお尻を拭くことなんて、ありませんでした。最初はやっぱり引きました(;´Д`)
うんちのにおいもスゴイ。なれるまでオエ・・・(+o+)と吐き気が込み上げたりもしました。
でも慣れって恐ろしい。いまでは「誰にでもできることではない仕事を、できている私ってスゴイ」と考え方を変え、自信につながりましたよ。
老人介護に意味があるのか?終わりのない日常
介護の仕事を始めてしばらくして、なんとなく無気力になる時期がありました。
「老人介護をする意味って何なのかな?」
入所者は食べて、出して、寝る、という作業をひたすら続けているだけです。
「成長する」こともなければ「回復する」こともありません。入所者はときどき「もう死んでしまいたいわ……」とつぶやくこともあります。
それにどう答えたらいいのか、私は言葉がありませんでした。死にたがっている老人、それを介護する私……私の仕事に果たして意味があるのだろうか?
それに対して私は、「入所者さんの家族になったつもりになろう」と思うことで介護の意味を見出しました。
人の子ならば、どんな方でも「親にはずっと元気で長生きしてほしい」と思っているはずです。でも仕事や生活に追われて、認知症になった親の介護ができない。そういうなかで仕方なく入所という選択をしたに過ぎないのです。
だからお子さんに代わって、親御さんの世話をしよう。私が入所者の子供になったつもりで。
そう思うと、なんだか排泄の介助も愛情を持ってできるようになりました。
ひそかに自分のなかで「私には、たくさんのお父さんやお母さんがいる」と思っています。これが、介護職に就いた私が介護で挫折しなかった魔法の言葉。
ね、介護職って普通の仕事では経験することができない、「親孝行」というとてつもない善行を積んでいると思いませんか?
もし「私に介護に適性があるのか心配」と入口でためらっている方は、ぜひ思い切ってこの世界に飛び込んでみることをおすすめします。
どんな仕事も、やってみなければ向き不向きはわからないものなんですからね。