介護老人保健施設(老健)とは?看取りもできるおすすめ介護保健施設
介護施設といえば「特養」!
なんとしても「特養」に入所したい、させたい!
そのように考えている方は、多いのではないでしょうか。
公的介護施設といえば特養を連想することが多いためか、特養に入所を希望する人が大変多く、入所条件が厳しくなった現在でも変わりません。
特養に入所する条件について詳しい解説は、「特別養護老人ホーム(特養)の入所条件とは?入所しやすい年齢や要介護を解説」をお読みください。
なんといっても費用の安さ、そして公的介護施設であるという安心感のためか、多くの人が特養ばかりを希望してしまいます。
しかしその希望理由を満たす介護施設は「特養」だけではありません。
厚生労働省が定める介護保険施設のひとつ「介護老人保健施設(通称、老健)」も同様に、ご本人やご家族が納得できる介護サービスを、安価に受けることができるんですよ。
また、「老健は終の棲家(ついのすみか)にはならない」 と誤解している方もいらっしゃいます。
この記事では実際に老健に勤務している介護士の筆者が、特養に負けない老健の良いところを現場からの生の声で紹介します。
Contents
介護老人保健施設(老健)とは?安い費用で質の高い介護サービスを提供
介護老人保健施設とは、介護保険法により次のように定義されています。
介護老人保健施設とは
要介護者であって、主としてその心身の機能の維持回復を図り、居宅における生活を営むことができるようにするための支援が必要である者に対し、施設サービス計画に基づいて、看護、医学的管理の下における介護及び機能訓練、その他必要な医療並びに日常生活上の世話を行うことを目的とする施設。
(介護保険法第8条第28項)
つまり 介護老人保健施設とは 、心身の機能の維持回復や、機能訓練などの支援や、日常生活において必要な世話だけでなく、医療を受けられる介護施設ということ。
老健は運営母体が医療法人であるため、適切な医療を必要なときに提供できるのが強み。
また介護保険の適用を受けられるため、有料老人ホームやサ高住(サービス付き高齢者住宅)よりもかなり費用を抑えられるのが大きなメリットです。
近年、医療介護総合確保推進法が施行されたことにより、特養の入所には「要介護3以上」というハードルが設けられました。
そのため特養に入所できるのは、「本当に介護が必要な、ごく限られた人だけ」となってしまったのです。
その一方で、老健は「要介護1以上」から入所でき、そのハードルもぐっと下がります。
費用は安く、リハビリや必要な医療も受けることができ、さらに入所基準もある程度低いので、利用者にはまさに願ったりかなったりという介護施設だといえるのです。
介護老人保健施設(老健)の費用はいくら?
介護老人保健施設は介護保険の適用を受けることができるため、有料老人ホームやサ高住などに比べ、費用を安く抑えることができます。
費用の内訳は、次のとおりです。
介護老人保健施設の費用
- 施設サービス費
- 居住費
- 食費
- 日常生活費
- その他費用
※具体的な金額は本人の要介護の度合いや所得、個室のタイプ、住んでいる自治体などによって違いが生じます。
介護老人保健施設で必要になる費用は月額費用のみ。初期費用などは一切支払う必要がありません。
したがって介護老人保健施設で支払うべき費用は、おおまかに月額8万円~13万円程度で収めることができます。
入所時、100万円単位でまとまったお金が必要になり、かつ月額2,30万円支払わなければならない有料老人ホームなどと比較すると、経済的にかなり助かりますね。
また介護老人保健施設は受けた医療について、利用者側に別途請求されることがないのも嬉しいところ。
特養までとは言いませんが、老健もかなりリーズナブルに利用できる介護施設だといえるんですよ。
また費用の支払いが経済的に難しいという方は、負担限度額認定を受けることで費用を抑えることができます。
介護保険サービスを所得に合わせた水準で利用するための申請方法は、「負担限度額認定制度とは?介護保険施設の負担を軽減する方法」に詳しい解説があります。
介護老人保健施設(老健)は看護師が常駐しているから安心度が高い
介護が必要だからといって、病気を患っているわけでもなく至って元気!という高齢者は多いのですが、いつなんどき医療が必要な状態にならないとも限りません。
医療体制は生活のすぐ近くに整っていたほうが安心ですね。
介護老人保健施設のメリットの一つに、フロア内に看護師が常駐していることがあげられます。
夜間も休日も含め、常に看護師が待機している状態をキープしている施設というのは、特別養護老人ホームでもありえません。
介護老人保健施設のみの強みなのです。
誤嚥(ごえん)があった場合、風邪から肺炎を併発した場合など、介護の現場では日常的に緊急事態が発生しています。そんなとき専門知識をもつ看護師の目配り・気配りはやはり素晴らしいもので、私たち介護士にとっても格別な心強さがあるものなんですよ。
介護老人保健施設の施設長は、医師です。 つまり老健には、最低でも一人は、専任医師がいるということになります。
また看護師は日中の時間帯だけでなく、夜勤でも看護師をつけている施設が多いのが特徴なんです。
私が勤務する老健でも、1フロア50人入所者がおり、介護士2人、看護師2人の夜勤者で回しています(それでもトラブル時は忙しさで目が回りそうですけどね!)。
入所者にとっても、その家族にとっても、医療体制が整っていることが最大の安心につながっているんですよ。
3カ月で追い出される!?介護老人保健施設(老健)に入所できる期間
介護老人保健施設はリハビリのための施設だから終の棲家にはならない。回復したらすぐに追い出されてしまう。これだから老健はアテにできない!
老健は、三カ月で退所させられると聞いたわ。
このように間違った知識をつけてしまい、介護施設えらびの選択肢から老健を外してしまう方もおられますが、大変もったいないことです。
介護老人保健施設に入所している場合、三カ月でムリヤリ退所させられるようなことは、今ではほとんどありません。
それは回復することの少ない認知症患者などを多く抱える今、現実問題として自宅復帰はかなり難しいのが現状だから。
そこで介護老人保健施設であっても、看取りまでしっかりケアしようというのが現在の主流です。
介護老人保健施設(老健)は看取り(ターミナルケア)にも対応
実際に私が勤める老健でも、看護師から「〇〇さん(入所者さんの名前)は、ご家族の希望でターミナルに切り替えになりました」などと申し送りされることが多々あります。
「ターミナル」というのは、ターミナルケア※(看取り介護)という専門用語です。
ターミナルケアとは
良くなることがない病気を抱えておられる患者さんの場合、「むやみと苦しみを長引かせ、ムリに延命措置をするより、安らかな最期を迎えるため残された生活を充実させてあげたい」と考える家族の望みに沿うケアのこと。
しっかりと看取りまで行った施設に関しては、「ターミナルケア加算」として国から介護報酬を受け取ることができます。
そのことからも、「終の棲家として看取りまでしてほしい」と考えている家族の望みと、「看取りをしたほうが経営的にもよい」と考えている施設側の思惑とは、しっかり合致しているといえるんですよ。
ですから介護老人保健施設には、「いつまでに出なければならない」という期限は、実際には決まっていません。
【まとめ】介護老人保健施設(老健)をおすすめする3つの理由!
この記事では、介護老人保健施設(老健)について解説してきました。
介護老人保健施設の特徴やメリットは次の3つです。
介護老人保健施設の特徴とメリット
- 介護保険が適用されるのでリーズナブル
- 医療体制が充実しているので安心
- 看護師と介護士が相互協力できるため環境がよい
以上のうち、三番目の「看護師と介護士が相互協力できるため環境がよい」という箇所は、実際に老健で働いている私の所感でもあります。
確かに「老健だから良い環境」で「ほかの介護施設は悪い」と決まっているわけではありません。
しかし特養やグループホームで働いていた経験のあるスタッフの話を聞いた結果、不思議なことに口をそろえ「老健が一番マシ」だといいます(あくまでもマシということですが)。
それは看護師と介護士がお互い連携し、協力できる環境づくりがなされている結果だといえるかもしれません。
いずれにせよ実際に入所するなら、スタッフ同士の関係が良好な施設を選んだほうが、利用者ご本人の心も安らぐことでしょう。
以上のような理由から、老健という選択肢はかなりオススメです。施設選びに迷っているなら、一度検討してみてくださいね。