要介護認定の7つの区分とは?区分変更の申請から却下される理由まで解説

要介護認定の区分

介護保健サービスを利用するためには、まず要介護認定を受ける必要があります。

要介護認定で、どの程度の介護が必要なのかを客観的に判定し、介護度に応じたサービスを受けられるようになります。

また、いったん「要支援〇」や「要介護〇」というような認定結果を通知されたとしても、いつまでも状態が変わらないことはありません。

そのため、必要に応じて区分変更が必要になるわけです。

この記事では、介護サービスを受けるためには決して避けて通ることができない、要介護認定のすべてについて解説します。

要介護認定の7つの区分とは?要支援・要介護の目安

介護サービスを利用するには、まず介護保険サービスの利用申請をしなければなりません。

そのための第一歩は「要介護認定」を受け、「どの程度介護が必要なのか?」を客観的に判定してもらことから始まります。

要介護認定の区分と申請方法

実際に、徘徊癖のある認知症患者は片時も目を離すことができず、介護の手が非常にかかります。

しかし要介護認定は病気の重症度とは関係なく、身体的な状況で審査されてしまうためおのずと介護度が低くなってしまうのです。

要介護認定の区分はどのような基準で審査されているのでしょうか?

要介護認定は、7つの区分に分かれており、介護の必要性が「高い」ほど、要介護度も「高く」なります。

まずは、どのような身体状況の人がどの区分に入るのか、おおまかな目安を紹介します。

要支援1とは?

  • 居室の掃除や、身の回りの世話の一部になんらかの介助が必要
  • 立ち上がりや片足で立つなどの複雑な動作になんらかの支えが必要なことがある
  • 日常生活(食事や排せつ)はほとんど自分でできる

要支援2とは

  • 身だしなみ、居室の掃除などの身の回りの世話になんらかの介助が必要
  • 立ち上がりや片足で立つなどの複雑な動作になんらかの支えが必要
  • 歩行や両足で立つなどの移動の動作になんらかの支えが必要なことがある
  • 日常生活(食事や排せつ)はほとんど自分でできる

要介護1とは?

  • 日常生活(食事や排せつ)はほとんど自分でできる
  • 要支援2より運動や認知能力、思考力、理解力が低下している
  • 問題行動や理解低下がみられることがある

要介護2とは?

  • 身だしなみ、居室の掃除などの身の回り全般になんらかの介助が必要
  • 立ち上がりや片足で立つなどの複雑な動作になんらかの支えが必要
  • 歩行や両足で立つなどの移動の動作になんらかの支えが必要
  • 排泄や食事になんらかの介助が必要なことがある
  • 問題行動や理解低下がみられることがある

要介護3とは?

  • 身だしなみ、居室の掃除などの身の回りの世話が自分ひとりでできない
  • 立ち上がりや片足での立位保持などの複雑な動作が自分ひとりでできない
  • 歩行や両足での立位保持などの移動の動作が自分ひとりでできないことがある
  • 排泄が自分ひとりでできない
  • いくつかの問題行動や全般的な理解の低下がみられることがある
  • ほぼ全面的に介護が必要

要介護4とは?

  • 身だしなみ、居室の掃除などの身の回りの世話がほとんどできない
  • 立ち上がりや片足での立位保持などの複雑な動作がほとんどできない
  • 歩行や両足での立位保持などの移動の動作が自分ひとりではできない
  • 排泄がほとんどできない
  • 多くの問題行動や全般的な理解の低下がみられることがある
  • 日常生活全般に介護が必要

要介護5とは?

  • 身だしなみ、居室の掃除などの身の回りの世話がほとんどできない
  • 立ち上がりや片足での立位保持などの複雑な動作がほとんどできない
  • 歩行や両足での立位保持などの移動の動作がほとんどできない
  • 排泄や食事がほとんどできない
  • 多くの問題行動や全般的な理解の低下がみられることがある
  • 意思の疎通が困難
  • 一人で日常生活がほぼできない
  • あらゆる場面で介護が必要

 

このように要介護に認定される各区分の目安は、段階別におおまかに決められています。

しかし認定調査が行われたその日の身体の状態や、病気の有無、ケアマネージャーの判断にも若干の差異があることから、実際の判定とは異なることもあります。

 

なにが違うの?知っているようでよく知らない要介護と要支援の「違い」

要支援と要介護との違いは、介護サービスを利用することによって、心身の状態が改善するかどうか。

介護サービスを利用することによって、少しでも改善の余地がある方は「要支援」、そうでない方は「要介護」に分類されます。

また要支援(予防給付対象者)と、要介護(介護給付対象者)は、介護保険の給付限度額にも違いがあります。

もちろん充実した介護サービスを受けることができる「要介護」のほうが、 給付限度額が多くなります。

介護サービスを受ける側とすれば、予算に余裕ができるよう、給付限度額が少しでも高くなる「要介護」に認定してもらえるほうが嬉しいですよね。

しかし高齢者の増加と少子化が進む昨今、できるだけ社会保障費を削減しようとするむきがあり、給付限度額が大きい介護度に認定されることは決して甘いものではありません。

要介護認定の区分と給付限度額

要介護認定により、どの区分に振り分けられるかで、介護保険給付金の限度額の上限が決まっています。

介護度が高く介護の必要性が高まる人ほど、どうしても出費がかさみますから、限度額の上限も高く設定する必要があるわけですね。

介護サービスに利用した費用のうち、限度額を超えた費用の超過分は、自己負担となります。

要介護認定の区分ごとの、介護保険給付金の限度額は、次のとおりです。

 

介護保険給付金の限度額

要介護認定の区分限度額
要支援1
50,030円
要支援2104,730円
要介護1166,920円
要介護2196,160円
要介護3269,310円
要介護4308,060円
要介護5360,650円

 

この限度額を超えると、介護サービスにかかるお金は1割負担にならず、全額自己負担になってしまいます。

 

 

介護度があがるにつれ、限度額オーバーになるケースが多いのが現状ですが、金銭的な理由から、介護サービスをあきらめる方も。

重度者になるにつれ、金銭的な理由から必要なサービスにもかかわらず受けることができないのは、社会的不平等でもあります。

一刻も早く、社会保障を充実させるよう、政策をたててほしいものですね。

要介護認定の申請からサービス利用までの流れ

介護保険サービスを利用するには、65歳以上だったら利用できるわけでも、介護保険に入って入れば利用できるわけでもありません。

自治体の窓口で要介護認定の申請をし、認定調査を受ける必要があるのです。

申請にはどのような書類を用意し、サービスを利用するまでにはどのような流れで進んでいくのでしょうか。

ここでは役所の窓口や地域包括センターで申請する方法から、サービス開始までの一連の流れを、おおまかに解説します。

①介護保険要介護認定申請書を提出する

要介護認定のためには、自治体や地域包括支援センターにて認定調査の申し込みをする必要があります。

そのときに持参しなければならない書類は、次のとおりです。

 

  • 印鑑
  • 介護保険被保険者証

 

まず市町村役場か地域包括支援センターの窓口に、 印鑑(シャチハタ以外)と介護保険被保険者証を持参します。

窓口には「介護保険要介護(要支援)認定申請書」が用意されていますので、必要事項を書き込みます。

 

要介護認定の手順と流れ
要介護認定申請書用紙の一例(各市町村役場に用紙があります)

 

要介護認定は、この書類を提出することがスタートです。

介護保険要介護認定申請書の中には、主治医の名前と連絡先を書く欄があります。

 

要介護認定に必要な主治医の意見書
要介護認定申請書の中には主治医の名前と連絡先を記入します

 

この欄に記入し申請書を提出すると、市町村役場から医療機関に対し、「主治医の意見書」を作成するよう依頼がいきます。

もし主治医がいない、という方は、市町村役場にお問い合わせください。市町村側から指定された医療機関の診察を受けることで、意見書を作成してもらうことができます。

②一次判定

要介護認定には、二度にわたる厳正な調査が行われます。

まず市区町村の担当者か、市区町村から依頼を受けたケアマネージャーが、自宅を訪問する一次判定が行われます。

一次判定は、本人や家族への聞き取り調査が中心です。具体的な調査項目は、次のとおりです。

 

一次判定(聞き取り調査)

  • 身体機能・起居動作
  • 生活機能
  • 認知機能
  • 精神・行動障害
  • 社会生活への適応
  • その他

 

「マヒ」や「拘縮」の有無などの身体機能や、「食事」や「移動」、「整髪」に関する生活機能に関すること、「意思の伝達ができるか」「生年月日や名前を言えるか」などの認知機能など、こと細かく聞き取りが行われます。

これらに加え「本人の主張する内容と、実際の様子に相違はないか」や、「会話の流れを理解できているか」なども、総合的に判断されることに。

この聞き取り調査は、コンピュータによる分析を経て、二次判定へと移行していきます。

このように、認定調査において重要な判断材料となる聞き取り調査。

できるだけありのままの姿を見てもらえるよう、リラックスできるような雰囲気で調査に臨むのがよいでしょう。

 

③二次判定

要介護認定は、一次判定と二次判定に分けられています。

二次判定では、一次判定の聞き取り調査の結果と主治医の意見書などの資料をもとに、要介護認定審査会※が開かれます。

要介護認定審査会とは

医師や薬剤師などの医療分野、看護師などの保険分野、介護福祉士や社会福祉士などの福祉分野から任命された専門家が合議し、申請者の要介護度を公正に審査する会議のこと

 

④認定結果の通知

一次審査・二次審査を通過し、認定結果が出されます。

結果が出るまでは、申請の日からおおよそ1カ月程度が目安。

結果は介護保険被保険者証とともに、自宅に郵送され、ひとまず一連の申請は完了します。

これで、介護保険サービスを利用できるようになります。

認定結果の有効期限は?

要介護認定の有効期限は、初めて認定を受けた方(新規)の場合、6カ月間です。

更新の有効期限は、12カ月間です。

つまり一度認定を受けたら、1年(=12カ月)ごとに、要介護更新認定を受けなければならないということになります。

 

要介護認定の結果が納得できなければ?区分変更申請をする

 

要介護認定の結果が納得できない

 

さきほども触れたとおり、社会保障費は削減される傾向にあり、認定基準は非常に厳しいものになっています。

たとえ、以前「要介護1」と認定されていたとしても、12か月後の更新時も再度、同じ介護度に認定されるとは限りません。

審査の結果、「改善の余地がある」または「以前よりも改善されている」と評価された場合、以前より軽い認定結果になることも。

そうすると、給付金限度額の範囲も狭くなり、受けられるサービスにも限界が出てしまいます。

 

認定結果に納得できない!区分変更の申請をしよう

もし認定結果が納得できるものではなかった場合、介護保険審査会に不服の申立て(申立て期限は通知から60日以内)をすることができます。

しかしこの結果がでるまでには長い時間(数カ月程度)かかってしまうため、介護保険審査会に不服を申し立てをするのはあまりオススメではありません。

よく利用されているのが、「区分変更申請」です。

区分変更申請は、要介護認定の申請と同じ方法ででき、結果も1カ月ほどで出るのでオススメです。

 

要介護認定の区分変更が却下される理由!通用しない言い訳の具体例

 

要介護認定が却下される理由

こう言いたい気持ちもわかりますが、このような理由では、せっかく区分変更申請をしても、却下されてしまいます。

そのほかにも、却下されやすい「変更申請の理由」は、次のとおりです。

 

こんな変更申請理由は却下されやすい!

  • 家族に介護できる人がいないから
  • 施設入所したい、または入所を継続したいから
  • 本人が介護を必要としているから
  • 本人に自立する意欲がないから
  • (本人が)高齢となり、より介護の手が必要になっているから

 

このような理由をいくら並べても、「医師の意見書」や「一次判定の特記事項」の内容が変わっていなければ、一度出た認定結果を覆すことは難しいでしょう。

ここで問題になってくるのは、実際の心身の状態は出された認定結果よりも悪い状況にもかかわらず、不当に軽度に評価されてしまったという場合。

このような場合、まず正しく認定審査を受けることが一番の早道です。そのためにすべきこととは、次のとおりです。

 

正しく認定審査で評価されるためにすべきこと

  • 状態を正しく把握できる医師に意見書を書き直してもらう
  • 信頼できるケアマネージャーを見つける

 

要介護認定に必要なのは、介護の必要性に「根拠」があるか、ということ。医師の意見書は、二次判定の重要な「根拠」となります。

そのためしっかりした意見書を、患者の様子をしっかり把握できる医師に書いてもらうことです。

次に、やはり経験豊富で、信頼できるケアマネに出会うこと。

ケアマネさんも人間ですから、千差万別、玉石混合です。有能なケアマネであれば介護を受ける本人やその家族にとって最適な「落としどころ」を模索してくれるはず。

もし現状のケアマネージャーに不安を感じているなら、先々のことも考えると、担当を変更してもらうのも必要なことかもしれませんね。

要介護認定まとめ!

この記事では、介護保険サービスを受けるための最初のステップとなる「要介護認定」について解説してきました。

要介護認定を行うには、市町村役場で申請書を提出すると、一次判定と二次判定を経て、認定結果が出ます。

しかし、その結果に納得できなければ、「不服申し立て」をすることもでき、また「区分変更申請」をすることもできます。

ご本人やご家族にとって、最適な介護サービスを受けることができるようになるのがまず一番大切なことです。

要介護認定が公正に行われるよう、申請者の側からもしっかりアプローチしていきましょう。