自筆証書遺言の検認とは!開封したら無効?手続きの手順などを徹底解説

自筆証書遺言は検認前に開封しないことと検認手続きの手順

タンスの中から、亡くなったお祖父さんの遺言書が見つかった!!

このようなシチュエーションに遭遇したら、あなたはどうしますか?

とりあえず中に何が書いてあるのか気になる・・・ちょっと中を見てみようかな・・・

ストップ!お気持ちは十分わかりますが、ここで開封してはいけません。

封印された遺言書(自筆証書遺言)は、裁判所以外で開封してはいけないルールになっています。

この記事では自筆証書遺言を開封し、内容を確認する「検認」という手続きについて、詳しく解説します。

自筆証書遺言を見つけたらまず検認の申立てをする

自筆証書遺言※1を見つけたら、検認※2の手続きを受けるため、まず家庭裁判所に「検認の申立て」をする必要があります。

※1 自筆証書遺言とは

自筆で書かれた遺言書のこと。ある一定の要件を満たしていれば、紙と筆記具だけで作成が可能です。

自筆証書遺言の要件について詳しい解説は「自筆証書遺言の要件と文例を紹介!無効にならない正しい書き方とは?」をお読みください。

※2 検認とは

遺言書の内容を明確にし、遺言書の偽造や変造を防止するための手続きのこと。検認は、管轄(遺言者の最期の住所地)の家庭裁判所にて手続きを受けます。

自筆証書遺言は、遺言者が公証役場のような公的な機関を通すことなく、自分の手によって作成したもの。

そのため開封されるまえに検認が行われ、相続人全員の前で遺言の内容が明らかにされなければなりません。

そうでなければ一部の相続人が、自分に有利なように遺言内容を改ざんしたとしても、誰にもわからないといったことも起こりえるわけです。

検認は、相続財産を遺言者の遺志を尊重し、公正に相続するために必要な手続きなんですね。

自筆証書遺言の検認にかかる費用と必要な書類一覧

自筆証書遺言の検認は、ただ未開封の遺言書を持って裁判所い行けばいい、というわけではありません。

まずは検認の申立てをする必要があります。申立人は「遺言書の保管者」か「遺言書を発見した相続人」がつとめます。

また自筆証書遺言の検認に必要な書類は、次のとおり。

 

自筆証書遺言の検認の申立てに必要な書類一覧

  • 家事審判申立書(PDF:63KB)
  • 当事者目録(PDF:22KB)
  • 遺言者の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • 相続人全員の戸籍謄本

 

また遺言者の子(及びその代襲者)で、すでに亡くなっている方がいる場合は、その人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本が必要になります。

これは第一順位の方(直系卑属)が相続する場合です。

直系卑属がおらず相続できない場合、財産の相続権は第二順位に移りますね。第二順位の方とは、遺言者の父母や祖父母に当たる方のこと(直系尊属といいます)。

法定相続人の範囲や順位についての詳しい解説は「【図解】5分でわかる!法定相続人の範囲や順位、それぞれの配分とは」にございます。

もし第二順位の方が相続する場合は、上記の必要書類に加えて、次の書類も提出しましょう。

 

相続人が「第二順位」のときの追加書類

  • 遺言者の亡くなった※直系尊属の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

※すでに亡くなった方がいる場合

 

さらに第二順位の方もいない場合、第三順位の方に相続権が移ります。第三順位の方は、遺言者の兄弟姉妹や甥(姪)に当たる方のことです。

このように第三順位の方が相続人になる場合や、遺言者に配偶者しかいない場合、また相続人がだれもいない場合は、次の書類を追加で提出する必要があります。

 

相続人が「第三順位」「配偶者のみ」「相続人不在」のときの追加書類

  • 遺言者の父母の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • 遺言者の直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • 遺言者の亡くなった※兄弟姉妹の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • 遺言者の亡くなった※甥姪(代襲者)の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

※すでに亡くなった方がいる場合

 

要するに遺言者と相続人との続柄を明確にし、相続する権利があるかどうか、またほかに相続権のある方がいないかどうかを確認するために必要な提出書類なんですよ。

自筆証書遺言の「検認の申立」から手続きの流れ

自筆証書遺言の検認の申立てが受理されると、家庭裁判所から「検認の期日」が通知されます。

検認の期日というのは、相続人立会いのもと実際に遺言書を開封する予定日のこと。

この検認の当日には、相続人が遺言書の開封に同席しなければなりません。

ただ相続人のなかに、なんらかの理由があって出席できないという人がいても大丈夫。ご本人の同意があれば、検認が取りやめになることはありません。

検認の当日には、相続人立会のもと遺言書の封を開け、遺言書の内容が確認されます。そして無事検認が済むと、その後「検認調書」が作成されます。

不動産の登記や、預貯金の相続手続きには「検認証明書」が必要になりますので、検認証明書発行の申請をしてください。

このような検認の流れを図で表すと、次のようになります。

検認の手順・流れ

自筆証書遺言の検認にかかる費用

自筆証書遺言の検認にはいくらくらいの費用がかかるのでしょうか。検認にかかる費用をまとめました。

 

遺言書の検認にかかる費用

  • 800円分の収入印紙(申立時)
  • 150円分の収入印紙(検認証明書申請時)
  • その他連絡用の切手代

※遺言書一通につきかかる費用です

そのほかにも戸籍を取り寄せる手数料もかかります。金額は自治体ごとで違いますので、お問い合わせください。

検認が不要なケースとは?

自筆証書遺言には、必ず検認が必要です。

なぜなら遺言書の内容を偽造、変造されないように、相続人立ち合いのもと遺言書の内容を確認する必要があるため。

そのほか検認が必要になる遺言書は、遺言書があることのみを知らせ、遺言の内容は秘密にできる「秘密証書遺言」があげられます。

しかし公証役場で証人を立てて作成される「公正証書遺言」は、偽造や変造ができないようになっているため検認の必要がないんですよ。

自筆証書遺言を検認しないと遺言書は無効になる?

遺言書を発見した相続人は、それを開封せずに速やかに検認の申立てを行わなけばならないことは、先ほど解説したとおりです。

しかしうっかり開封してしまったらどうなるのでしょうか。

たとえば検認の手続きを行わずに遺言書を開封したり、検認を行わないまま遺言を執行したり、裁判所に遺言書を提出しなかったりした場合は、5万円以下の罰金を科せられる恐れがあります。(民法1005条)

そもそも検認で遺言書の有効、無効を判断することはできません。そのため検認しなかったからといって無効になることはないんです。

しかし検認を受けないでいると困ることがでてきます。

検認の手続きを行わなければ、法務局で不動産の登記ができないため土地の相続ができず、また銀行でも証明書の提示を求められるため預貯金の相続ができません。

そういった点からも、遺言書を発見したらかならず検認を受けなければならないことは明白ですね。

「自筆証書遺言を検認しない」という選択肢はアリ?

自筆証書遺言を検認しない、という選択肢は「ナシ」です。

もし遺言の内容が「自分に不利な内容なのではないか?」と恐れていたとしても、遺言書を隠したり、破棄してしまってはいけません。

もし遺言書を相続人が秘匿・隠匿した場合、相続欠格※となる可能性もあります。

相続欠格とは

遺産を相続する権利を失うこと。相続欠格についての詳しい解説は「相続欠格事由の確認や証明方法!遺産相続できないケースを解説」をお読みください。

で、でも・・・バレなきゃいいんじゃないの?

遺言書自体をなかったことにしてしまえ!と考えているあなた、法律違反であることを自覚し、無謀なことはやめておきましょう。

自筆証書遺言を検認前に開封してしまったときの対処法

亡くなった親の遺品整理をしているときに、タンスの引き出しから遺言書を見つけてしまった。思わぬことに驚いて、つい封を開けてしまった。

自筆証書遺言の検認についての知識がなければ、開封してはいけないことなど知りませんよね。うっかり開封してしまった場合、どうすればいいのでしょうか。

もし「うっかり遺言書を開封してしまった」、「相続が終わったあとに遺言書を見つけてしまった」などのトラブルがあれば、まずは相続に強い弁護士事務所にご相談されてはいかがでしょうか。

電話相談を無料で受け付けているところも多いので、検討してみてください。

自筆証書遺言の検認の期間と期限!いつまでに検認すべき?

自筆証書遺言の検認をいつまでに受けなければならないか、期限が決まっているわけではありません。

しかし遺産相続の手続きをする以上、いつまでも放置しておいていいわけはありませんね。

遺産相続をするうえで大切になってくるのが、「相続税の申告・納付期限」と「相続放棄と限定承認の期限」。

この二つの具体的な期限は、次のとおりです。

相続の必要な手続き 期限
相続税の申告・納付 亡くなった日の翌日から10カ月以内
相続放棄・限定承認 相続人であることを知ってから3カ月以内

 

遺言書の検認をした上での相続手続きは、このようにしっかりとスケジュールが決まっています。

相続の期限について詳しくは、「相続手続きの期限と流れを知っておこう!期限が過ぎたらどうなる?」で解説しています。

どちらの期限も、「忙しかったから」などという理由で期限を延期するようなことはできません。

遺言書を見つけたらできるだけ早く申立てをすることが、のちのちのためにも大切なことなんです。

タンスの引き出しから自筆証書遺言を見つけたらすぐに検認を

この記事では、自筆証書遺言の検認について解説してきました。

まず一番大切なことは、遺言書を見つけたら開封せずに、すぐに家庭裁判所に検認の申立てをすること。

裁判所によって指定された「検認期日」に相続人が出向き、相続人立会のもとようやく遺言書の封が切られる、という流れでした。

どうしてこれほど遺言書の開封について、法律で厳格に取り決められているかというと、お金、財産に関することだからです。

面倒だと感じる方も多いかもしれませんが、しっかり法律に従って処理し、もめごとのないように公正に対処しましょう。