特別養護老人ホーム(特養)の費用はいくら?料金が払えない人のための減免措置とは

特養の自己負担額を計算する方法 

特別養護老人ホームって安く入居できるっていうけど、具体的にどれくらいの費用がかかるの?

特別養護老人ホームは公的施設であるため、入居費や利用料金の自己負担額が「安い」という話を聞いたという人も多いでしょう。

しかし具体的にいくらなのかは、介護を受ける本人の介護度や所得、入居する施設によっても違いがあり、なかなか計算しにくいのではないでしょうか。

この記事では、特別養護老人ホームの費用がどんな人にいくらかかるのか、また所得が少なく年金だけでは料金が払えないという人はどうすればいいのかを解説します。

特別養護老人ホームとは?介護保険が適用される介護老人福祉施設

特別養護老人ホームは、自治体や社会福祉法人などにより運営されている公的な介護施設の一つで、「特養(とくよう)」とも呼ばれています。

介護保険の適用を受けることができるため、有料老人ホームなどと比較すると費用面での負担が軽く、人気の高い介護施設です。

特別養護老人ホームについての詳しい解説は、「特別養護老人ホームとは?入居するために必要な要件や費用などを全解説」をお読みください。

厚生労働省が定める特別養護老人ホームの費用!利用料金の内訳はどうなっている?

特別養護老人ホームが人気の理由は、質の高い介護サービスを割安な料金で利用できるところにあります。

まず特別養護老人ホームは、入居する前に支払う初期費用や入居一時金のようなものが必要ありません。

月額の利用料のみでOKなところが、まず嬉しいですね。

しかし利用料金は一律ではなく、利用者の介護度や、入所する部屋の形態、利用者の所得などで月額利用料には違いがあります。

特別養護老人ホームの月額費用の算出方法

特別養護老人ホームを利用するための費用は、次の3種類の費用を足し合わせたものになっています。

特養の月額費用の計算方法

このように3つの費用があり、それぞれに料金がかかります。ここでは、介護保険サービスの自己負担額が1割の人を対象とした、費用について解説します。

※前年の所得が一定以上ある場合、所得に応じて介護保険サービスは2割~3割負担となります。

施設サービス費(日割り)の自己負担額

まず施設サービス費という費用がかかります。

施設サービス費は、要介護度や個室の形態によって分けられており、一日ごとにかかる料金です。

施設サービス費の一日の自己負担額

負担額/日 要介護3 要介護4 要介護5
従来型個室 695円 763円 829円
多床室 695円 763円 829円
ユニット型個室 776円 843円 910円
ユニット型個室的多床室 776円 843円 910円

※特別養護老人ホームは要介護3以上の65歳以上高齢者が対象者であるため、要介護3以下の料金は省略しました。

厚生労働省による介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)の利用者負担より抜粋

 

居住費・食費(日割り)の自己負担額

次に、居住費と食費の負担があります。

居住費や食費は、利用者の生活水準に合わせて料金が決められています。

ポイント

「生活水準に合わせて」というのは、所得に応じた区分で料金がかかり、「お金がない」「生活が苦しい」という低所得者には、負担が過重にならないように配慮されているということです。

負担限度額認定の対象者は次のとおりです。

負担限度額認定の対象者

設定区分 対象者
第1段階
  • 生活保護等を受給している人
  • 世帯全員※1が市町村民税を課税されていない方で、老齢福祉年金の受給者
第2段階
  • 世帯全員※1が市町村民税民税を課税されていない方で、本人の合計所得金額と課税年金収入額※2と非課税年金収入額※3の合計が80万円以下の人
第3段階
  • 世帯全員※1が市町村民税民税を課税されていない方で、第2段階以外の方
第4段階
  • 市町村民税課税世帯(一般世帯)

※1 世帯を分離している配偶者を含みます

※2 国民年金や厚生年金などの老齢年金

※3 遺族年金や障害年金など

 

つまり「生活保護を受けているか」や「市町村民税を納付している世帯か」などを基準にして、第1段階~段階別に所得区分を設け、それに合わせた自己負担額を設定しているというわけです。

該当する方が特別養護老人ホームに入居した場合の「居住費」や「食費」は、次のとおりです。

 

特別養護老人ホームの食費と居住費(日額)

  第1段階 第2段階 第3段階 基準費用額
食費 300円 390円 650円 1,380円
従来型個室 320円 420円 820円 1,150円
多床室 0円 370円 370円 840円
ユニット型個室 820円 820円 1,310円 1,970円
ユニット型個室的多床室 490円 490円 1,310円 1,640円

 

これらの表を見てわかるとおり「第1段階で多床室を利用した人」の負担額は0円/日なので、もっとも自己負担額を少なくできる、というわけです。

「少しでも利用料を節約したい」という人は、日割りでかかるこれらの費用をよく比較し、検討してみてくださいね。

日常生活費(月額)とは?

さらに日常生活費という費用があります。

日常生活費とは、習字やお花、陶芸など、利用者が希望するクラブ活動や行事にかかる材料費や、インフルエンザ予防接種にかかる費用などのこと。

各施設によって違いがありますが、月に一万円程度が一般的な金額です。

どのようなものに利用されているかは、施設により違いがありますので、費用の用途について気になる方は、施設の担当者にお尋ねください。

特別養護老人ホームの費用を年金だけでまかなうことは難しい

さきほどの項目では、特別養護老人ホームの費用はどんな項目でどれくらいかかるかについて解説してきました。

ここでは一般的な収入のある家庭で、一カ月の利用料がいくらくらいかかるかトータル金額を試算してみます。

第4段階・要介護5でユニット型個室を利用した場合の自己負担額(月額)

まず市町村民税を納税している、一般的な所得水準の世帯で「要介護5の人が、ユニット型個室を利用した場合」を例にとって月額の自己負担額を計算してみましょう。

ユニット型個室というのは、ユニットごとに職員を配置した下のような形態の個室のことです。

介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)のユニット型個室とは

平成29年度 厚生労働省資料より

 

第4段階・要介護度5・ユニット型個室を利用した場合の自己負担額(月額)

施設サービス費 27,300円(910円×30日)
居住費+食費

59,100円(居住費1,970円×30日)

41,400円(食費1,380円×30日)

日常生活費 約10,000円
月額合計 137,800円

 

「要介護5・ユニット型個室利用」だと、月額の自己負担額は137,800円(目安)になります。

このようにご本人の収入が年間80万円以上あったり、扶養する人の収入が一定以上ある場合、自己負担額が収入を超えてしまうこともありえます。

公的年金だけで特別養護老人ホームの費用を支払うことが難しく、貯金を切り崩しながら支払わなければならないということも現実にあり得ます。

特別養護老人ホームの費用が払えない人は減免措置がある

「公的年金(国民年金)だけで特別養護老人ホームの自己負担額をまかなうことは難しい」としても、いまさら厚生年金に加入しなおすことができるわけではありません。

貯金はいずれなくなってしまうし、子や孫にもしっかりした収入がないし・・・

そこでいかに特別養護老人ホームの費用を節約すればいいのでしょうか。

特別養護老人ホームの自己負担を少しでも軽くする方法は、次のとおりです。

 

特別養護老人ホームの自己負担額を軽減する申請

 

世帯全体の所得や預貯金が少ない方は、「負担限度額認定制度」を利用して自己負担額の減免を求めることができます。つまり第1段階~第3段階までの区分に入ることができれば、負担額が減るというわけですね。

ただこの制度を利用するには、「介護保険負担限度額認定申請書」の提出が必要です。

そのほかの介護費用の減免措置も、市区町村を通じて申請を行わない限り費用面での支援を受けることはできません。まずは管轄の市町村役場や地域包括ケアセンターにご相談ください。

特養の費用が払えない!本当に困ったら市町村窓口に相談を

本当にお金がない、介護が必要なのに老人ホームに入ることができない

そんなときは、生活保護を受けることも検討してください。

近年「独居老人が自宅でひっそりと亡くなっていた。所持金が数百円だった」とか、「夏場にエアコンを節約して、熱中症で亡くなってしまった」といった、痛ましいニュースも耳に入ります。働くことができない高齢者の貧困問題は、命に直結する緊急事態なんです。

そもそも生活保護は、憲法25条に定められた生存権により守られた国民の権利。

「お金がない」「身よりがない」「体が動かない」そんな方にこそ、使われるべきセーフティネットです。

「特別養護老人ホームの費用が支払えない。困った・・・」そんなときは生活保護も視野に入れ、市町村役場に相談しましょう。

生活保護を受けることができれば、特別養護老人ホームにも安く入居することができます。

第1段階(生活保護を受けている人)で、要介護5、多床室利用の場合の費用の目安を計算してみました。

 

第1段階・要介護度5・多床室利用の場合の自己負担額(月額)

施設サービス費 24,870円(829円×30日)
居住費+食費

0円(居住費0円)

9,000円(食費300円×30日)

日常生活費 約10,000円
月額合計 43,870円

 

「多床室」というのは、数名の利用者が相部屋になる次のようなタイプの居室形態です。

特別養護老人ホームの多床室とは

平成29年度 厚生労働省資料より

もちろん生活保護を受けるには、お金や財産だけでなく、家や車など持ち物についての審査があります。生活保護に該当するかどうかの要件をクリアしないことには、ここまで費用を抑えることはできません。

生活に困ったらまずは早めに自治体の担当部署に相談することがオススメです。