特別養護老人ホームとは?入居するために必要な要件や費用などを全解説
特別養護老人ホームは、普通の老人ホームとはちがうの?
このような疑問を持っている人も多いのではないでしょうか。
介護施設(老人ホーム)にはたくさんの種類があり、それぞれどのように違うのか分かりにくいですね。
介護施設のひとつである特別養護老人ホームとはいったいどういう施設で、どのような特徴があるのか、入所するのにどのような基準があり、どれくらいの費用がかかるのかについて解説します。
Contents
特別養護老人ホームとは?介護老人福祉施設とも呼ばれる介護保険施設
特別養護老人ホームとは、地方自治体や社会福祉法人が運営する公的な介護保険施設※のことで、略して「特養(とくよう)」とも呼ばれています。
介護保険施設とは
介護保険サービスを使って利用できる介護施設のこと。具体的に「特別養護老人ホーム」と「介護老人保険施設」、「介護療養型医療施設」の三施設を指す。
また厚生労働省において、可能な限り自立した生活を営むことができるよう、入浴、排せつ、食事等の介護、相談及び援助などが受けることができる介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)であると定められています。
特別養護老人ホームの入所に関するデメリットとは?
特別養護老人ホームは、安定的な介護サービスを割安な料金で利用できるので、人口の多い都市部を中心に入所希望者が非常に多く、何年も順番待ちをしなければならないことがデメリットでした。
しかし近年では、厚生労働省による入所要件や基準が厳しくなり、利用できる人の範囲が狭まりました。特別養護老人ホームに入所できる人が少なくなったのです。
したがって空床のある施設もあるようです。
空床にしておくなんてもったいないなあ!
このように考えている方も多いとは思いますが、なかなか入所者を増やせない現状もあるとのこと。
まず介護士が足りず、施設としての基準を満たすまでの人手が確保されていないためです。
このことから導かれる特別養護老人ホームのデメリットは、次のとおりです。
特別養護老人ホームの入所に関するデメリット
- 入所希望者の多い地域では順番待ちになる
- 入所要件が厳しくなり入所に該当しないと判断される可能性がある
- 空室・空床があっても入所できない場合がある
人員を確保するにはまず介護業界の処遇改善が求められています。
処遇や手当が改善され、より多くの人材が介護の仕事に携わるようになれば、介護を必要とするたくさんの方がホームに入ることができるようになるというわけですね。
特別養護老人ホームについて定める法律とは?設備及び運営に関する基準
特別養護老人ホームは、老人福祉法(昭和三十八年法律第百三十三号)第十七条第一項の規定に基づき、厚生労働省によって設備や運営基準が定められています。
たとえば、特別養護老人ホームの基本方針については、次のように書かれています。
(基本方針)
第二条 特別養護老人ホームは、入所者に対し、健全な環境の下で、社会福祉事業に関する熱意及び能力を有する職員による適切な処遇を行うよう努めなければならない。
2 特別養護老人ホームは、入所者の処遇に関する計画に基づき、可能な限り、居宅における生活への復帰を念頭に置いて、(中略)入所者がその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるようにすることを目指すものでなければならない。
3 特別養護老人ホームは、入所者の意思及び人格を尊重し、常にその者の立場に立って処遇を行うように努めなければならない。
4 特別養護老人ホームは、明るく家庭的な雰囲気を有し、地域や家庭との結び付きを重視した運営を行い、(中略)福祉サービスを提供する者との密接な連携に努めなければならない。
特別養護老人ホームの設備及び運営に関する基準 (厚生省令第四十六号)より抜粋
厚生労働省が定めている法律では、特別養護老人ホームについての基本方針のほか、そこで働く職員についてや運営規程、設備の基準など、施設につてのあらゆるルールが定められています。
特別養護老人ホームに入るには?入所判定基準や入所要件
特別養護老人ホームは、高齢者ならどなたでも入ることができるという施設ではありません。ある一定以上の、常に介護が必要な方に限り、入所が認められています。
特別養護老人ホームに入所するためには、次の要件をクリアしていなくてはなりません。
特別養護老人ホームに入所するための要件
- 65歳以上であること※
- 要介護3以上であること
- そのほか緊急性が高いことが認められる場合
※法令上で定められた特定疾病がある場合に限り40歳以上でも入所が認められます。
近年、特別養護老人ホームに入所するための要件は厳しくなり、「要介護3以上」という一定条件をクリアしなくてはならないことになりました。
ただし、「緊急性が高い」と判断される場合、要介護度にかかわらず入所できるとされています。
入所判定基準は要介護3!ただし特別に入所が認められる特例入所も
特別養護老人ホームに入所するための判定基準は、日常生活動作によって判定される「要介護度」。入所希望者であるご本人が、要介護3以上であることが判定基準です。
しかしあくまで原則的なもの。
要介護1や要介護2の方であったとしても「やむをえない場合」と判断されると、特別に入所が認められるケースもあります(特例入所といいます)。
特例入所が認められるケースには、次のような要件があります。
特別養護老人ホームに特例入所が認められるケース例
- 認知症により、在宅での生活が困難なとき
- 知的障害や精神障害により、在宅での生活が困難なとき
- 家族による虐待などで安全な生活が送れないとき
- 家族による支援や地域での介護サービスも不足し、在宅での生活が困難なとき
このように要介護3以下であったとしても、審査を通過すれば入所が認められるケースもありますので、まずは施設にお問い合わせください。
特別養護老人ホームに入るための手続き
特別養護老人ホームに入るには、先ほど説明したとおり「入所要件」に該当しなければなりません。
入所要件をクリアしている場合、入所のための手続きをする必要があります。
手続きは次の順序で行ってください。
特別養護老人ホームに入るための手続き
- 入所申込書を提出する
- 入所審査を受ける
- すぐ入居ができる場合契約の手続きをする
- 入居
まず希望する特別養護老人ホームに直接問い合わせをし、施設が指定する申込書に内容を記入し提出します。
その後、各施設が提示する日程にしたがい、事前調査や面談、介護状況、健康診断が行われます。
このとき申込書に事実と異なる記載があった場合、入居できなくなる可能性がありますので注意してくださいね。
申込時と状況が変化しているときは、ただちに変更届を提出しましょう。
入居に支障がないと判断されると、契約の手続きを行い、入所となります。
※この手続きや入所の流れについては、自治体や施設によって多少違いがある可能性があります。
特別養護老人ホームの入所に必要な費用!初期費用や月額利用料はいくら?
特別養護老人ホームは、介護保険サービスを利用できる公的施設なので、ほかの民間施設に比べて、非常に金銭的な負担の少ない介護施設です。
とはいえ具体的にはどれくらいの金額がかかるのでしょうか。
ここでは特別養護老人ホームの入所にかかる費用や、毎月支払う利用料など、気になるお金の話について解説します。
特別養護老人ホームの利用者負担額はトータルでいくら?
特別養護老人ホームの利用に関しては、施設サービス費や居住費、食費、日常生活費などが必要になります。
このように大きく分けて3種類の費用がかかり、それを合計した金額がトータルの費用となります。
まず施設サービス費は、当事者さまの要介護度や居室の形態によって決められている費用です。
次に居住費や食費があります。これは当事者さまの生活水準によって費用が変わり、たとえば生活保護をもらっていたり住民税の免除者だと、この費用はかなり抑えることができます。
さらに日常生活費。この費用は利用者さまの希望する娯楽や行事などに充てられる費用で、各施設によって違いがあります。だいたい月一万円程度になります。
特別養護老人ホームにかかる費用や自己負担額について、また減免措置についての詳しい解説は「特別養護老人ホーム(特養)の費用はいくら?料金が払えない人のための減免措置とは」をお読みください。
これら3種類の費用を足し合わせた金額が、特別養護老人ホームの月額費用になります。
たとえば要介護5の方が多床室を利用した場合の、トータル金額はいくらになるでしょうか。
要介護5で、市区町村民税課税世帯の方が「多床室※」を利用した場合の一カ月の自己負担額は、次のとおりです。
多床室とは
居室定員2名以上の相部屋で、一つの部屋に複数のベッドが配置されているケースが多い。もっとも居住費が安く、コストが抑えられるタイプの部屋です。
要介護5の方が多床室を利用した場合の一カ月の自己負担額
施設サービス費 | 24,830円(829円/日) |
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居住費 | 25,200円(840円/日) |
食費 | 41,400円(1,380円/日) |
日常生活費 | 10,000円(施設により異なります) |
合計 | 101,430円 |
※一カ月、30日で計算しています。あくまで目安の金額であり、正確な金額については入所を希望する施設に直接お尋ねください。
このように特別養護老人ホームを利用すると、だいたい10万円程度のお金が必要になることがわかりますね。
ただこちらの概算は「多床室」を利用した場合なので、よりプライベートを重視した部屋のタイプを選べば、その分利用料も高くなります。
特別養護老人ホームについてまとめ!困っていたらまず相談を
この記事では、特別養護老人ホームについて解説してきました。
特別養護老人ホームは、厚生労働省の老人福祉法によりルールや在り方が細かく取り決められており、自立した生活を送ることができるよう支援を受けることができる介護老人福祉施設であると定められています。
特別養護老人ホームは、介護保険の適用を受けることができるため、質の高い介護サービスを安い料金で受けられますが、入居基準が厳しくなったことや、介護士不足から、なかなか思うように入居できないのが現実。
とはいえ、著しく日常生活に支障をきたしている場合、順番が優先される可能性もあるので、施設に一度相談に行かれることをオススメします。