【図解】5分でわかる!法定相続人の範囲や順位、それぞれの配分とは

亡くなった方の財産が誰のものになるのか、遺産相続問題でモメることはよくありますね。

もし遺言書を作成していない場合、遺産は誰の物になるのでしょうか?

遺言書がない場合の遺産相続は「法定相続人について決められた法律」に従って行われます。

この記事では遺産相続の決まりごとである法定相続人や相続分について、わかりやすく解説します。

法定相続人とは?民法で定められた正式な相続人のこと

親族であればだれでも遺産相続の権利があるわけではなく、相続争いが起きないよう「法定相続人※」が決められています。

法定相続人とは

民法で定められた相続人のこと。相続人の範囲で、相続できる優先順位が決まっています。

また法定相続人が、民法の定めに従って相続する遺産配分の割合のことを「法定相続分」といいます。

法定相続人には、おもに次のようなルールがあります。

法定相続人のルール

  • 配偶者は無条件で相続人となる
  • 相続できる優先順位が決められている
  • 相続順位の高い者から相続する
  • 相続の順位が同列なら頭数で割る
  • 相続の権利は放棄することもできる

「財産」は不動産や預貯金だけでなく、負の遺産も含まれます。

そのため法定相続人となると、借金なども同時に相続することになってしまいます。(これはうれしくありませんね。)

不利益な相続をしたくないとき「相続放棄」の手続きを取ることもできます。

相続権があるのは誰?法定相続人の範囲と順位を図解

被相続人(財産をのこす側の人)との関係によって、相続を受けることができる範囲と順位が民法で決められています。

法定相続人が相続を受ける範囲と順位は、次の通りです。

被相続人との関係 相続権の順位
配偶者 常に相続人
子(孫) ←直系卑属といいます 第1順位
父母(祖父母) ←直系尊属といいます 第2順位
兄弟姉妹(甥姪) 第3順位

 

上図のケースだと、相続できるのは「配偶者」と「子」と「孫」です。

親族には血のつながりある「血族」と、婚姻によって親族となった「姻族」の2種類に分けられます。

さらに父母や祖父母のように自分より上の世代の血族のことを「尊属」、子や孫、甥、姪のような自分より下の世代の血族のことを「卑属」といって区別しています。

法定相続人の相続順位のきまりと代襲相続という考え方

法定相続人だからといって全員が相続できるわけではありません。

相続には順番があり、順位の高い人から順番に相続するというルールがあります。

相続順位のきまり

  • 第1順位(子)がいる場合は、法定相続人は「配偶者」と「子」となり、第2順位以降の人は相続できない
  • 第2順位がいる場合は、法定相続人は「配偶者」と「親」となり、第3順位の人は相続できない
  • 第1順位と第2順位がいずれもいない場合は、法定相続人は「配偶者」と「兄弟姉妹」となる

被相続人に子(または孫)がいない場合は、第2順位の父母(または祖父母)となります。

父母や祖父母もともに亡くなっていない場合は、さらに第3順位の兄弟姉妹(兄弟が亡くなっているときには甥や姪)へと相続順位が低いほうへ移行していきます。

子がいなければ孫、父母が亡くなっていれば祖父母、兄弟姉妹が亡くなっていれば甥や姪というのは、代襲相続※という考え方です。

代襲相続とは

民法で定められた相続権。被相続人の子が相続の開始以前に死亡したときなどに、その者の子がこれを代襲して相続人となることができます。

このように同じ相続順位の人であるなら代わりの相続人が認められ、同じ相続分を相続できるというわけです。

しかし被相続人の孫というように直系卑属に限られています。子供の配偶者は代襲相続人とはいいません。

だれがどれだけ相続できる?法定相続分の分配の割合

法定相続分(相続の割合)は、法定相続人の組み合わせで違いがあります。

法定相続分については、民法第900条に定められています。

<民法第900条より抜粋>

一、子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各2分の1とする。

二、配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、3分の2とし、直系尊属の相続分は、3分の1とする。

三、配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、4分の3とし、兄弟姉妹の相続分は、4分の1とする。

四、子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の2分の1とする。

少し言葉がややこしいですよね。ここでは遺産相続の権利のある人の具体的な組み合わせ例をあげ、遺産相続の割合や注意点を解説します。

法定相続人が「配偶者のみ」の場合

法定相続人が配偶者のみの場合、すべての財産を相続できます。

しかし内縁の妻や愛人、離婚した妻は配偶者に含まれません。

このケースと同じように法定相続人が「子のみ」の場合は子が100%、法定相続人が「親のみ」の場合は親が100%相続します。

法定相続人が「配偶者と子供」の場合

法定相続分は配偶者が1/2、子供が1/2です。(民法900条の1)

子供が複数人いる場合、1/2の相続分をさらに頭数で分割します。養子や認知されている子供も「子」として平等に相続権があります。

このとき第2順位である親が健在であっても、親の相続分はありません。

法定相続人が「配偶者と親」の場合

第1順位の子供がいない場合、配偶者と直系尊属で相続することになります。

法定相続分は配偶者が2/3、親(父母)が1/3です。(民法900条の2)

このとき第3順位の兄弟に相続分はありません。

法定相続人が「配偶者と兄弟(第3順位)」の場合

被相続人に配偶者がいるものの、子がおらず親も亡くなっている場合、兄弟姉妹と遺産を分けることになります。

法定相続分は配偶者が3/4、兄弟姉妹が1/4です。(民法900条の3)

兄弟姉妹のうち誰かが亡くなっており、その子供(被相続人の甥や姪)がいるときは、亡くなった兄弟姉妹の代わりに甥や姪が代襲相続することができます。

法定相続人が「長男と長女の子供(孫)」の場合

被相続人に配偶者がおらず、法定相続人が子供だけだと、100%子供が相続します。

子供が2人なら、2人で平等に分割します。(民法900条の4)

しかしたとえば長男と長女がおり、長女が死亡しているがその子供(被相続人の孫)がいる場合、長女の代わりに孫が代襲相続することができます。

つまり長男が1/2、長女の子が1/2です。(長男の子は相続人にはなりません)

非嫡出子の法定相続分?

民法900条の4で「嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の二分の一」とされていましたが、婚外子かどうかで差別をするのは「法の下の平等」に反するとし、2013年9月最高裁によって違憲判決が下されています。

そのため現在では「嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の二分の一とする」という部分が削除され、法律上婚姻関係にない男女の間に生まれた子(非嫡出子)であっても、同等の相続をすることができるようになりました。

相続人以外に相続するなら遺言書を書く!遺留分の減殺請求とは?

遺言書を残せば、法定相続人以外に相続させることができます。

このように遺言によって決められる遺産配分のことを、(法定相続分に対して)指定相続分といいます。

そのため例えば「介護で世話になった長男の嫁に遺産をのこしたい」など、特定の人に遺産相続を希望するなら、遺言書を書く必要があります。

POINT

しかし遺言書には書き方に決まりがあるため、その書式にのっとって正しく書かなければなりません。

内容に不備があると、法的効力がなくなるため注意が必要です。

また遺言書の内容が法定相続人の遺産相続の権利を著しく侵害するものだった場合、認められないケースもあります。

たとえば「遺言書を書いたから、全財産を愛人に遺せる」というわけではありません。

遺言書が優先されるとはいえ、妻(配偶者)が異議を申し立てすれば、法定相続人として相続の権利が守られるからです。

遺留分(法的に認められた遺産の取り分)を侵害された人(妻)は、侵害した人(愛人)に遺留分の減殺請求※をすることができ、その分の支払いを求めることができます。

遺留分の減殺(げんさい)請求とは

遺留分とは民法によって定められた、法定相続人が最低限相続できる取り分のこと。兄弟姉妹以外の相続人に認められています。遺留分の減殺請求とは、その遺留分を請求できる権利のことです。

遺贈分の減殺権は、遺贈があったことを知ってから1年以内に請求しなければ、時効により消滅してしまうので、遺言書による遺産相続の内容に異論がある場合はできるだけ早く手続きをする必要があります。

法定相続人の範囲や順位、それぞれの配分についてのまとめ

この記事では、法定相続人とは何なのかという基礎情報と、相続を受けられる範囲や順位、相続人の組み合わせで変わる法定相続分について解説してきました。

民法によって決まっている相続は条文はすこし難しく感じるかもしれませんが、内容自体は常識で理解できるものなのでそんなに難しくありません。

ただその家ごとで事情が違います。自分のケースはどれに該当するのか、迷う場面もあるかもしれません。無用な相続トラブルを避けるため、迷ったら弁護士に相談してみるのがもっとも早い解決策だといえるでしょう。

だれもが納得できる明るい遺産相続を期待したいですね。