銀行口座、死亡後もそのまま放置していると?休眠預金等活用法とは

銀行預金口座は、口座の名義人が死亡すると凍結され、お金の移動が一切できなくなることはご存知ですか?

これは相続財産を守るために行われる措置です。

しかし凍結を解除するためには、相続人全員の戸籍謄本や印鑑証明を用意し、必要な手続きを取らなけらばなりませんので手間も時間もかかります。

相続人とか、相続とか、よくわからないし

なんだか面倒くさそう・・・

ついつい手間を惜しんで放置してしまっている人もいるのではないでしょうか。

しかし銀行口座を凍結したままにしておくと、大切な預金がなくなってしまうかもしれませんよ。

この記事では、口座を凍結しておくと結果的にどうなるのか、どういう処置がとられる可能性があるのか、新しく施行される法律も踏まえて解説します。

休眠預金等活用法が2018年より施行!金融庁が発表する法律の概要

2016年12月「民間公益活動を促進するための休眠預金等に係る資金の活用に関する法律(平成28年法律第101号)」が国会で可決され、2018年1月より施行されました。

この法律、どのような内容なのでしょうか?

2009年1月1日以降のお取引から10年以上、その後のお取引のない預金等(休眠預金等)は、民間公益活動に活用されることとなります。※金融庁ホームページより抜粋

休眠預金等とは

 

預金者等が名乗りを上げないまま10 年間放置され、入出金等の「異動」がない預貯金のこと。

休眠預金と呼ばれるお金は、平成25年~27年の調査では1年間に約700億円(払戻金を差し引いた金額)にも上るそうです。

結構大きな金額ですよね。

これまでは5~10年間取引のなかった預貯金は、そのまま金融機関の収入となっていました。

しかし休眠預金等活用法により、休眠預金の使い道を決め、子供や若者、地域の支援など、公益活動に従事する民間団体への貸付に充てることになったのです。

凍結された銀行口座をそのままにしておくと遺産は寄付されてしまう?

確かに「持ち主がいなくなったお金をずっと眠らせておくのはムダ」ですし、「お金を効果的に循環させて弱者や地域の人々のために使われるのはイイコト」だと思えますね。

でもちょっと待ってください。

そのお金、自分や身内のお金だったら納得できますか?

ほんの数千円~数万円程度なら「寄付」だと割り切ることもできますが、これが数十万~数百万円単位だったら・・・?

休眠預金と言われているお金の中には、亡くなった人の遺族が預金に気付かないまま放置しているものが相当数含まれています。

もし預金の存在を知らない場合、または存在を知っているにもかかわらず凍結解除の手続きを怠っている場合、本来相続人の物であるはずのお金でも、持ち主不明として自動的に処理されてしまいます。

預金を凍結したまま放置しているということは、つまり「お金を寄付したこと」と同じことなんです。

お金を返してもらうこともできる!すみやかに口座の凍結を解除する手続きを

もし口座が凍結してからすでに10年以上が経過している場合、休眠預金はもう戻ってこないのでしょうか?

今回施行された休眠預金等活用法の概要の中で、払い戻しについて次のように公表されています。

◆「預金者等」は、いつでも「預金等」があった金融機関の窓口で「休眠預金等」の払戻しを 受けることが可能

◆「預金者等」は、いつでも「預金等」があった金融機関に「休眠預金等」に関する情報提供 を求めることが可能

このように10年以上経過している場合でも、払い戻しには応じてもらえるようです。

POINT

ただ名義人が死亡している場合、休眠預金の払い戻し手続きだけでなく、口座の凍結解除の手続きが必要になります。

亡くなった方の戸籍謄本や、相続人全員の戸籍謄本、印鑑証明書、そのほか金融機関ごとに必要になる書類にも違いがありますので、事前に問い合わせをしましょう。

「通帳やカードが残っていない、紛失してしまった」という場合でも、書類を提出すれば認められる可能性もあるようです。はじめから諦めないで、まずは金融機関に連絡してみてくださいね。

手続きを先延ばしにしない!できるだけ早く銀行口座の名義変更を

この記事では10年間取引のない預金口座が民間公益活動団体の活動資金として貸し付けられることを取り決めた「休眠預金等活用法」について解説しました。

口座名義人の死亡によって凍結され、そのまま忘れ去られた預金口座も、当然この法律の適用範囲内です。

法律の概要には「いつでも払い戻しに応じる」と書かれていますが、だからといっていつまでも手続きを先延ばしにしていい理由にはなりません。

今のところ払い戻しできるとしていても、いつ法律が変更されるとも限りませんしね。

それにお金を口座に眠らせたままにしておくことは、亡くなった方の存在を大切にしている態度とはいえないでしょう。

実のところ筆者は、長期間取引のない口座がどうなるのか知りませんでした。この法律を知ったとき、「怪しからん!人の預金を勝手にまた貸しするとは」と内心憤慨しました。

でもよく考えると、法律が悪いわけではありません。いままで「各金融機関ごとの裁量で処理」されてきた休眠預金の使い道を、法律化したに過ぎないのです。

亡くなった方のためにも、そして遺された遺族のためにも、凍結された口座の名義変更をできるだけ早く行い、資産の管理をしっかりする意識が大切なんですよ。