自筆証書遺言の要件と文例を紹介!無効にならない正しい書き方とは?

亡くなれば、どんな人でも多かれ少なかれ相続は発生します。

もしも、自分に万が一のことがあったときのことを考え、あらかじめ遺言書を作成しておくことはとても大切なこと。

しかし遺言書の書き方には一定のルールがあり、それが守られていないと、せっかく遺言書を作成したにもかかわらず、無効になってしまうケースもあるんですよ。

この記事では遺言書の作成について注意すべきポイントや、具体的な遺言書の文例についてやさしく解説します。

自筆証書遺言の要件!遺言書を自分で作成するとき注意するポイント

遺言の形態にはいくつかの種類があります。その種類とは、次のとおりです。

遺言の種類 概要
自筆証書遺言 自筆で書かれた遺言
公正証書遺言 公証人によって書かれた遺言
秘密証書遺言 内容は秘密にでき、遺言の存在のみ証明できる遺言
危急時遺言 口頭で行える特別方式の遺言

 

このようにさまざまな遺言の形態がありますが、ここでは遺言者みずからの手によって作成する「自筆証書遺言」について解説します。

自筆証書遺言の要件とは?エンディングノートとは違いルールが厳格

自筆証書遺言は自筆で作成できる遺言書ですが、法的な効力を持つためには要件を押さえる必要があります。

エンディングノートのように、心の思うまま、自由に書くというわけにはいきません。

エンディングノートについて詳しくは「一番簡単なエンディングノートの書き方!必要な内容とポイント」で解説しています。

自筆証書遺言について、民法では次のように定められています。

第968条 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。

要するに、自筆証書遺言の要件は次のとおりです。

  • 遺言者が全文を自分で書く
  • 日付を入れる
  • 氏名を自書、押印する

遺言する人は、はじめから終わりまで、一貫して自分の筆跡で書かなければいけません。途中で誰かに代筆してもらうと、遺言書は無効になります。

どんな紙とペンでも構わないので、必ず手書きにします。パソコンやワープロ、録音は不可。ボールペンや万年筆などを使用し、鉛筆など消すことができる筆記具は使わないほうがいいでしょう。

これは遺言書の偽造を防止するため。

遺言書を作成した年月日を入れるのを忘れないこと。

これは何通も遺言書を書き直している場合もあるので、どれが最終的な遺言書なのか判別するためです。

自分の名前を自署し、押印をします。

印鑑は、シャチハタ以外の印鑑を使いましょう。印鑑は三文判や認印、拇印でも可能ですが、正式な遺言書になるのですから、できるだけ実印を用いるのが望ましいです。

自筆証書遺言の注意点!必ず守らなければいけない最低限のルール

自筆証書遺言は、ほかにも作成するときのポイントや注意点があります。自筆証書遺言を作成するときの注意点をまとめました。

自筆証書遺言を作成するときの注意点

  • 家庭裁判所で検認するように注意書きをする
  • 遺言書の文章を適切な方法で訂正する
  • パソコンは不可!必ず手書きで書く
  • 遺言書が複数枚あるときは、契印あるいは割印をする
  • あいまいな表現を避ける
  • 実印で封印をする
  • 保管場所に留意する

以上の注意点について、補足説明をします。

公正証書遺言は検認しなければ無効?開封しないように注意書きをする

自筆証書遺言は「検認※」という手続きをしなければなりません。

検認とは

 

被相続人が亡くなったあと、自筆証書遺言は裁判所の手続きによって開封され、中身が確認される必要があります。その手続きのことです。

「亡くなったお父さんの遺言書がある!すぐに開封してみよう!」

遺言書を見つけたら中身がものすごく気になる気持ちもわかりますが、すぐに開けてはいけません。

自筆証書遺言は家庭裁判所で開封されます。

この検認手続きを怠ると、「過料(5万円以下の罰金)」が科せられる可能性があります。(遺言書が無効になることはありません)

自筆証書遺言をうっかり開封してしまったらどうする?

「罰金」と聞くと、ちょっと怖くなりますよね。

でも大丈夫。「うっかり開封してしまった」人も、安心してください。

検認手続きに対して国民の認知度が低いこともあり、うっかり開封してしまった場合も実際に過料を科せられるケースは少ないそうです。

開封してしまったとしても、家庭裁判所に適切に申し立てをしましょう。

以上のような理由から、自筆証書遺言をこれから作成するという人は、外の封筒には「開封しないで、家庭裁判所に持っていく」旨、但し書きをするなどの配慮をしておいたほうがいいでしょう。

自筆証書遺言が無効にならない正しい訂正の方法とは?

書き間違えた場合、修正テープで消すのはNG。また二重線を引くだけでもダメです。

遺言書を無効にしないためには、遺言書ごと書き直すのが一番良い方法ですが、次の手順で訂正すれば有効になります。

遺言書を訂正する手順

  1. 訂正箇所に二重線を引く
  2. すぐ上に正しい文言を加筆し印鑑を押す
  3. 欄外に「どこを何文字直したか」を記入する
  4. 署名と押印をする

下の図は遺言書の訂正例です。

自筆証書遺言の注意点!遺言書にパソコンを使うと無効に

自筆証書遺言は肉筆で書く必要があります。

パソコン、ワープロ、ワードなどで作成すると無効になるので注意してください。

そのほか、誰かに代筆を頼んでもいけません。遺言書の一部を代筆してもらっても無効になります。

はじめから終わりまで、自分の手によって書き切りましょう。

自筆証書遺言の注意点!遺言書が複数枚あるときは契印を押す

遺言書が複数枚あるときはホチキスで止め、継ぎ目に契印を押します。

契印は複数枚ある書類の間に、不正な書類が挟まれたり、書類が抜かれたりすることを防ぐ役目があります。

自筆証書遺言の注意点!あいまいな表現を避ける

自分で遺言書を作成する場合、「あいまいな表現」になっていることに気づかないことが大きな問題点だといえるでしょう。

「息子」だけでは何番目の息子なのか、「土地」だけではどこの土地なのか伝わりませんから、第三者の目から見ても明確にわかるように記す必要があるのです。

あいまいな表現になっているばかりに、逆に遺言書が相続争いのタネになってしまうこともあります。

自筆証書遺言の注意点!遺言書は実印で封印をする

自筆証書遺言は封印をしなくても無効にはなりません。

しかし何者かによる偽造や変造を防ぐためには、外の封筒を実印で封印すると確実ですね。

実印で封印したあと、封筒の裏面に「作成日の年月日と署名、押印」があるとカンペキです!

自筆証書遺言の注意点!遺言書の保管場所に留意する

自宅で保管することになるので、保管場所に注意する必要があります。

紛失や盗難の危険のない、安全な場所に保管することが大切ですが、だからといって銀行の貸金庫などに保管することは絶対にやめましょう。

被相続人の死後、貸金庫を開けるには、手続きがとても煩雑になります。被相続人や相続人のすべての戸籍や、実印の提出が必要になり、鍵を開けるまでに何カ月もかかってしまうためです。

自筆証書遺言の文例!無効にならないための正しい書き方

自筆証書遺言は、以上の注意点を守れば後は自由に作成してもOKです。

しかしいきなり「自由に作成しろ」といわれても、書きにくいですよね。

ここでは一般的な自筆証書遺言の文例を紹介します。

妻(配偶者)あり、子供なしの田中一郎さんの文例

遺言執行人や祭祀継承者の記載は必要?

遺言執行人には未成年や破産者以外は誰でも指定できますが、必ず指定しなければならないものではありません。

遺言執行人が指定されていないと、相続者全員が協力して相続の手続きを行う必要があります。もし相続人がうまく協力できないと思われるなら、遺言執行人を立てたほうがいいでしょう。

遺言執行人は弁護士や行政書士、司法書士、税理士など、専門家にお願いすることもできます。

また祭祀継承者は、墓や仏壇、神棚、位牌、家系図など、家系を存続させるのに必要な継承者です。必要に応じて指定するのがよいでしょう。

税理士を無料で探すには?

おすすめはどっち?自筆証書遺言と公正証書遺言の違いを知ろう

「自筆証書遺言ってなんだかメンドくさい・・・」

と思う人もいるかと思います。

自筆証書遺言は、専門家を必要とせず自分の手で作成できるメリットがある反面、次のようなデメリットがあります。

自筆証書遺言のデメリット

  • 作り方を間違うと無効になる恐れがある
  • 安全に保管するのが難しい

自宅に大切に保管していたとしても、地震や水害などの天災、盗難、紛失、火事などで遺言書自体が無になってしまうかもしれません。

以上のようなデメリットを解消するには「公正証書遺言」がおすすめです。

多少費用がかかるものの作成時は専門家の手によって作成され、作成した公証役場には原本が保管されているため天災にあっても安心です。

自筆証書遺言は要件が厳しい!無効にならないように作成しよう

この記事では、自筆証書遺言を作るうえでの要件とはなんなのか、注意点はなにか、具体的にどうやって書いたらいいのか、を解説してきました。

自筆証書遺言は自分で自由に書くことができる遺言方法ですが、意外に大きな問題点がたくさんあることに気が付きました。

遺言書を作成してまで遺したい思いがあるなら、さまざまな面で安全性の高い公正証書遺言のほうを検討してみてもいいかもしれませんね。

「遺言書をせっかく書いたのに無効になってしまった」

このような悲劇が起きないよう、自筆証書遺言の作成には細心の注意を払いましょう。